エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 貴利くんから意外な言葉を貰って驚いてしまう。

 お世辞なのかと思ったけど、そういった配慮にやや欠けている貴利くんの性格を考えるとそうではない気がする。それなら本心なのだろうか……。

 でも、まさか貴利くんが私を可愛いと思っているとも思えない。

 すると、麻宮さんもきょとんとした表情で隣に座る貴利くんを見ている。同じ病棟で働いているのなら、おそらく麻宮さんも貴利くんの性格をよく理解しているはずだ。

 貴利くんは、自分の婚約者(本当は違うけど)を、『可愛い』と簡単に言っちゃうような軽い性格では全くないので麻宮さんも驚いているのだろう。けれど、そんな彼女の表情がだんだんと強張っていくのがわかった。

 麻宮さんは、マイペースにコーヒーを飲んでいる貴利くんに視線を向けると、少しだけ距離を詰めて声を掛けた。


「そういえば郡司先生。六〇二号室の――」

 
 貴利くんに向ける表情はさきほどのピリッとしたものとは違い、だいぶ柔らかくなっている。

 ふたりの会話の内容は仕事の話だろうか。

 よくわからない専門的な用語が飛び交い始めるので、参加できない私は蚊帳の外に置かれた気分になってしまう。

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