エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 言葉を交わすふたりの様子をちらちらと伺いながらケーキを食べていると、なんだか胸がちくりと痛み始めた。

 むかしから貴利くんは言葉数があまり多いほうではない。こんな風に女性と会話を弾ませているのを見るのは初めてだから驚いている。

 きっとこの胸の痛みはそのせいだと言い聞かせて、私はふたりからそっと視線をそらした。

 待ち合わせをしているという麻宮さんの友人が早く来てほしい。早く麻宮さんがこの場から離れて、貴利くんとふたりに戻りたい。

 今日は私が貴利くんとデートなのに、これじゃあ話の輪に入れない私がジャマ者みたいだ。

 そんな悶々とした気持ちを抱えていると、「千菜」と貴利くんが私を呼ぶ。


「ケーキもう一つ食べるか? 今日は俺の奢りだから遠慮しなくていいぞ」


 空になった私のお皿を見てそう言ったのだろう。本当はすごく食べたい。フルーツタルトを食べたあとは、濃厚チーズケーキを食べようとこっそりと決めていたのに。

 でも、私は首を横に振る。


「いらない。ちょっとお手洗いに行ってくる」


 そう告げて、私はカバンを手に取り席を立った。

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