エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望～独占欲全開で娶られました～

　もしかして、もう貴利くんが来たのだろうか。それにしては早い気がすると思いながら振り返ると、そこには久しぶりに見るイケメンが立っていた。


「おっ。やっぱり千菜じゃん。久しぶり！」


　元彼のかけるだ。相変わらずの爽やかな笑顔を浮かべて私の隣に腰を下ろす。


「こんなところでどうしたの？　一人？」

「う、うん。今は一人。かけるは？」

「俺は彼女とデート」

「デート……」


　それなら近くに彼女がいるのでは？　そう思ってあたりを見回すものの、彼女らしき姿はどこにも見当たらない。そんな私の疑問を察したのか、かけるが困ったように頬をかいた。


「あ～、えっと……デートしてたんだけど、ケンカしちゃって」


　どうやらそれで彼女が先に帰ってしまったらしい。かけるが重たいため息をこぼした。

　私とかけるが別れて三ヶ月になる。理由は、かけるが別の人を好きになったから。

　もちろん納得できなかったけど、別れたくないと情けなくすがり付いたり、格好悪く腹を立てたりすることもできなかった私は、物分かりのいい女を演じて、『そっか、わかった』と頷いた。

　今振り返ると、たぶん私はだいぶ自分に無理をしてかけると付き合っていたのだと思う。