エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 でも、たった今それが一瞬で消えた。あれほど忘れられなかったかけるへの想いが冷めていく。


「……帰る」


 そう告げて私はベンチから立ち上がった。

 これ以上かけると一緒にいたくない。話したくない。顔も見たくない。

 そんな思いからこの場を立ち去ろうとすると、それを引き留めるようにかけるが私の手首を強く掴んだ。そのまま勢いよく引き寄せられた瞬間、唇に何かを押し付けられる。

 その行為に驚き、私は思い切り目を見開いた。

 かけるが私にキスをしてきたのだ。しかも強引に。

 付き合っているときは嬉しかったキスも今はただ嫌悪感しかない。

 嫌だ。かけるとなんかキスしたくない。

 でも、かけるの片手が私の後頭部に回り、しっかりと押さえつけられているので逃げられない。

 どうすることもできなくて瞳に涙がじわっと溢れたときだった。かけるに掴まれている手とは反対の腕を思いきり誰かに引っ張られ、その勢いでようやくかけるのキスから解放される。


「お前。千菜に何をしていた」


 聞き慣れたその低い声に一瞬で安堵する自分がいた。

 私の腕を掴み、自分の背中の後ろに隠してくれたのは貴利くんだ。

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