エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
「あんた誰?」
かけるの苛立つような声が聞こえて、私はとっさに貴利くんの服をぎゅっと握ってしまう。
あんなに大好きだったかけるのことが、さっきの無理矢理なキスで一気にこわくなってしまった。
「俺は、千菜の婚約者だ」
相変わらず感情の込もってない低い声で貴利くんが告げる。
「婚約者!?」
かけるがそう叫び、可笑しそうに笑いだす。
「なんだよ千菜。そういう男がいるなら早く言えよ。つか、俺と別れてまだそんなに経ってないのにもう結婚? もしかしてお前、俺と付き合ってる間にその男と浮気してた?」
そんなことしてない。私はかけるが本気で好きだったし、あのときはかけるも私を好きでいてくれていると思っていたのに。
悔しさと悲しさ。いろんな感情が押し寄せてきて、でもそれを口に出せなくて、自然と貴利くんの服を握る手に力が込もってしまう。
「へぇ。俺のことすげー好きに見せていたのも演技だったのか。でも、ちょうどいいじゃん。俺もお前のこと別にそんなに……好きじゃ……な……」
ぺらぺらと話し続けていたかけるの声が少しずつ小さくなり、不自然に途中で止まってしまった。