エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 どうしたんだろう。

 そう思って目の前の貴利くんの背中からそっと顔を出して、かけるの様子をうかがう。すると、何かに怯えるように顔をひきつらせていた。

 その視線の先には貴利くんがいて、私も少しずつ視線を上げていき貴利くんを見上げる。そしてその表情に思わず震え上がった。


 ……こ、こわ~。


 もともとが強面なのに、かけるをじっと黙って睨みつけている貴利くんの顔はさらに凄みが増している。誰がどう見ても今の貴利くんは怒っている。

 普通にしていても見た目や雰囲気などから人を委縮させてしまうような圧のある人なのに。そこに怒りの感情がプラスされると人の動きを止めてしまえるほどの威圧感が生まれるようだ。


「言いたいことはそれだけか」

「は、はい」


 何が起きても飄々としている性格のかけるが、貴利くんを前にして完全に固まってしまっている。

 けれど、何とか身体を動かすと「それじゃ」ときごちなく告げて、逃げるようにこの場を去ってしまった。

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