エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 その背中を見えなくなるまで見つめていると、かけるを撃退した貴利くんの視線が私に向けられていることに気が付く。

 その表情は先ほどまでかけるに向けていたときと同じく険しいまま。怯んだ私はとっさに「ごめんなさい」と勢いよく頭を下げた。もしかして私に対しても怒っているのかもしれない。


「用事があるから先に帰ると嘘をついて、赤レンガで元彼とキスしていてごめんなさい」

「そうか、あいつは千菜の元カレか。嫌そうに見えたが、さっきのキスは千菜も同意の上だったのか?」

「違うよ。さっきのは無理矢理されたの。偶然ここで会って……」

「そうか。それなら千菜が謝る必要はない」


 下げていた頭を上げて、恐る恐る貴利くんの顔を見ると、さっきまでの怒りの表情が消えている。とはいえ、無表情でいられるのも居心地が悪い。

 しばらく続いた沈黙を破ったのは貴利くんだった。


「どうして先に帰ると嘘をついてカフェを出たりしたんだ」

「それは……」


 言葉に詰まってしまったものの、正直に打ち明ける。


「貴利くんと麻宮さんがいい感じだったから」

「いい感じ?」

「ふたりだけで私の知らない仕事の話で盛り上がってるから」

「寂しかったのか?」

「寂しいというか、仲間外れにされた気分になったというか……」

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