エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~

「大丈夫だよ。今度はメールもしっかり返すし、電話もちゃんと出るから」


 そう告げたときだった。

 貴利くんの手が私の後頭部に回ると、ぐいっと引き寄せられる。その瞬間、あっという間に唇を塞がれた。

 それは触れるだけの短いキス。

 気が付いたときには、貴利くんの唇はもう私から離れていた。


「今のであいつとのキスは忘れろ」


 そう言い残すと、貴利くんは私に背を向けて走り出す。その背中はあっという間に見えなくなった。


「え……」


 そこでようやく私の頭がフル回転を始める。

 貴利くんにキスされた。なんで?

 かけるとのキスが一瞬で吹き飛んでいく。でも、今度は貴利くんとのキスが忘れられなくなってしまった。

 私の同意もなしに唇を塞がれたのはかけるのときと同じなのに、不思議と貴利くんとのキスは嫌な気分がしない。

 むしろ心臓が飛び出しそうなほどドキドキしている。

 その後もしばらくは貴利くんの唇の感触が離れなくて、彼との初めてのキスを何度も思い出してしまった。



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