エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 とにかく私は貴利くんと結婚したくない。絶対にしたくない。しないからね、とじっと睨み付けていると、玉蔵が大きなため息をこぼした。


『千菜は貴利くんの何が不満だっていうんだ。いい男じゃないか。将来を有望されるエリート医師なうえに、いずれは大病院の院長。性格も真面目だし、見た目もいい。こんなにハイスペックな男はそうそう見つからないんだからな』

『ハイスペックなんてどうでもいいから、私は結婚するなら優しい人がいい』


 あと、できればかけるのような細マッチョなイケメン希望。


『何を言っているんだ千菜は。貴利くんは優しいだろ。なんせ、病気で苦しんでいる人をその病魔から救っている医者なんだからな』

『あの人は優しくなんてないよ。だってむかし……』


 そう言いかけてやめた。

 九年前、彼が私に放ったあの言葉は、なんとなく私以外の人には教えてはいけない気がした。


‟いつまで泣いていれば気がすむ。人はいつか死ぬと決まっている。それが遅いか早いかどちらかだ”


 人の命を救う医者を目指しているはずなのに、大好きな祖母を亡くして悲しむ私に、彼はどうしてあんなにも冷たい言葉が言えたのだろう。

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