エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~

「人はいつか死ぬと決まっている。それが遅いか早いかどちらかだ」


 不意に聞こえた言葉に私はハッとして、貴利くんを見つめた。

 それはあのときの……。

 祖母を失って泣き続けていた私に、貴利くんが言った言葉だ。


「受け入れて前を向け。そうでないと亡くなった人が悲しむ」


 ――そうだ、思い出した。




『いいか、千菜』




 九年前……。




『受け入れて前を向くんだ。そうでないとおばあさんが悲しむぞ。きっとおばあさんは天国から、大好きな千菜の笑顔を見ていたいはずだ』




 あの言葉には続きがあった。

 初めの言葉の衝撃が大きくて、そのあとに続いた言葉をしっかりと聞こうとしなかったから覚えていなかった。

 でも、あのときと同じ言葉を耳にした瞬間ふと、当時のことを思い出した。

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