エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 貴利くんから初めて聞かされた私への想いに驚きはしたけど、戸惑いは少しもなかった。むしろ、なかなか答えを出せないでいた最近の自分の気持ちが、すとんとひとつの答えに落ち着く。



 ――貴利くんも私と同じ気持ちでいてくれたんだ。


 
 それに気が付いたら、安心したような嬉しい気持ちになって、私も自分の両手を貴利くんの背中に回して彼を抱き締め返した。


「私も好き」


 やっぱり私は単純だ。

 キスをされてから貴利くんのことが気になり始めて。九年前の誤解が解けて貴利くんの本当の気持ちを知って。弱っている姿を見たら放っておけなくて。好きだと言われて嬉しくなった。

 そして、この人のそばにいたいと思ってしまった私はもう貴利くんが好きなんだ。


「千菜」


 私を抱き締める腕がとかれると至近距離で見つめられる。

 港町総合病院の屋上から見える海の向こうに落ちていく夕日が眩しい。ふたりで目を細めながら、貴利くんの唇がゆっくりと私に寄せられる。

 そっと優しく触れ合った唇はすぐに離れると再び重なった。今度は深く長く、たまに角度を変えてキスが続く。

 通じ合ったばかりの互いの気持ちを確かめるように何度も何度もキスは続いた――



< 145 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop