エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
俺は医者だ



 *

 朝からしとしとと冷たい雨が降っていた。

 本当は午後からデートで映画を観に行く予定だったけどやめて、今日は貴利くんのマンションでのんびりだらだらとふたりで過ごすことになっている。

 貴利くんは午前だけ病院に顔を出しに行くようなので、私たちが待ち合わせたのは午後二時。

 大きな傘を差しながら歩いて向かうと、マンションの前に座り込んでいる人影を見つけた。屋根があるので雨には当たっていないようだけど、たまに吹き荒れる風が寒いのか大きな身体を小さく丸めている。


「こんなところで何してるの。風邪引くよ」


 慌てて駆け寄って声を掛けると、貴利くんはゆっくりと立ち上がった。吹き込んできた雨粒が、彼の着ている灰色のパーカーに小さな染みをいくつか作って濡れている。


「ここで千菜を待っていた」

「いつから?」

「千菜から家を出たと連絡がきたときからだ」

「そんなに待ってたの⁉」


 私の自宅から貴利くんのマンションまでなら歩いても来られる距離だけど、今日は雨が降っているからバスで来た。

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