エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 しばらくすると二人分のマグカップを持った貴利くんが来て、そのひとつを私に手渡す。


「熱いから気をつけろよ」

「うん」


 ゆっくり受け取ると、まだ少し冷たさの残る手をマグカップから伝わるほんのりとした熱で温める。

 すると、すぐ隣に貴利くんが腰を下ろした。その距離の近さに動揺した私は、反射的に身体を動かすと一人分ほどの距離を取ってしまう。


「なぜ避ける」

「えっ」


 どうやらさっきの私の行動が気に入らなかったらしい。不満そうに私を睨む貴利くんと目が合う。


「べ、別に避けたわけじゃないけど」

「俺と距離を取っただろ」

「え……えっと、それは……」


 答えながら、目の前のローテーブルへマグカップを置いた。

 鈍感なのに、どうしてそういうことには素早く気付くのだろう。

 でも、まさか言えるわけがない。

 隣の部屋のベッドを見たら、ひとりで勝手に妄想を広げてしまい、動揺してしまった。なんて恥ずかしくて絶対に言えない。

 それに、もしかしたら意識しているのは私だけで、貴利くんは何とも思っていないのかもしれない。

 いや、むしろそっちの可能性の方が高い気がしてきた。

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