エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 お昼過ぎから減り始めた利用者も夕方頃になると再び増え始める。学校帰りの学生や、仕事帰りの社会人の利用が増えて少し忙しくなるのだ。


「おねぇちゃん本返しにきたよ」

「あっ、とも君。久しぶりだね。お母さんは?」

「ママは向こう。ゆめちゃんの絵本選んでる」


 夕方の四時半。常連の小学一年生とも君が図書館にやって来た。

 一人でカウンターに来たのが心配で声を掛けると、どうやらお母さんは児童書コーナーでとも君の妹の絵本を見ているらしい。

 とも君が図書袋の中に入っている本を一冊一冊取り出してカウンターに置いていく。そのバーコードを読み取りながら返却処理をしていると、とも君が尋ねてきた。


「おねぇちゃん。このシリーズの違う本ある?」

「電車の? それ人気だからどうかなぁ。ちょっと待ってね」


 返却処理が終わるとパソコンを操作して本の在庫を調べる。


「あー残念。全部貸し出し中だね。お母さんにお願いして予約してもらう?」

「ううん予約はしない。今日読みたいから電車の他のある?」

「ちょっと待ってね」


 電車や乗り物系の本は子供に人気で開架の棚に出ているとすぐに貸し出しになってしまう。今も残っているのはとも君がすでに読んだことのある本ばかりだ。

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