エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 寝癖でボサボサの髪をゴムでひとつに結びながら返事をすると、母親はリビングのソファに置いてあったボストンバックを手に取った。その視線がダイニングテーブルでチーズケーキを食べている貴利くんへと向かい「ゆっくりしていってね」と笑顔で告げてからリビングを後にした。

 しばらくすると玄関の閉まる音がして、どうやら家の中は私と貴利くんのふたりだけになってしまったようだ。


「おばさんは相変わらず忙しそうにしているんだな。寝坊助の千菜も少しはその姿を見習った方がいいと思うぞ」


 リビングにそんな声が響いたので、ぱくぱくとチーズケーキを食べ続けている男をキッと睨みつけてやる。

 余計なお世話だ。私だって仕事の日はしっかりと早起きしている。休みの日くらいのんびりと寝てもいいじゃないか。

 そう反論したくなったけどグッと呑み込んだ。この男に何か言い返した場合、その何倍にもなってさらに面倒くさい返事が戻ってくることを私は知っている。

 はぁ……と重たいため息をこぼしながら、冷蔵庫の扉を開けた。


「それで、貴利くんはうちに何の用?」


 自分の朝食を電子レンジで温めながら貴利くんに声を掛ける。

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