エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 それからも、知人から花の苗を貰ったけれど育て方が分からないという利用者さんを園芸書のコーナーに案内して一緒に調べたり、結婚式のスピーチの参考になるような本を探しているという利用者さんに本を選んだり、検索した本が書棚に見つからないという利用者さんの代わりにその本を探したり、予約本を受け取り来た利用者さんにその本を渡すとおすすめの本を教えてほしいと頼まれたり……。

 カウンターの仕事を忙しくこなしていると、書棚の方から小谷さんが駆け寄ってきた。


「沢木さん」


 確か彼女はこの時間、返却された本を書棚に戻していたはずだ。なんだか慌てたようにカウンターに来たけれど何があったのだろう。


「あの人来てるよ」

「あの人?」


 小声でそっと言われたものの、小谷さんの言う‟あの人”にピンとこなくて首を傾げる。そんな私に小谷さんはさらに言葉を続ける。


「ほらあの人だよ。この前、中澤さんのこと助けてくれたお医者さん」

「お医者さん……」


 もしかして貴利くんのことだろうか。

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