エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 取り残された私はそのあとの料理を一人寂しく食べた思い出があるので、そういったコース料理店が少しトラウマになっていたりする。

 ラーメンならすぐに出てくるし、すぐに食べられる。もしも一人で食べることになっても、まわりにお一人様の客が多いと寂しさも感じない。そういう理由もあってあのラーメン屋を私は好んでいるのだ。

 今日は何ラーメンを食べようかな。お腹がすいているからチャーハンと餃子セットにしちゃおうかなとメニューに迷っていると、隣から低い声に話し掛けられる。


「千菜は、仕事が好きか?」

「え」


 その唐突な問いに思わず隣の貴利くんの横顔を見つめる。彼は真っ暗な空にじっと視線を向けていた。


「好きだよ。どうして?」


 仕事は好きに決まっている。司書になるのは私の子供の頃からの夢だったから。

 大学で司書の資格を取り、卒業の年に運良く港町図書館で司書の求人を見つけて、採用試験を受けたら受かった。正規の職員ではないから給料はそれほど多くないし、安定もしていない職だけど、それ以上にやりがいがあるし、何より子供の頃からの夢の仕事に就けて毎日充実している。

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