エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 でも、どうして突然そんなことを聞くのだろう? 

 不思議に思いつつ貴利くんを見つめていると、彼は私に視線を向けようとはせず真っ直ぐに前を見つめたままポツリと呟く。


「もしも俺が、仕事を辞めてくれと言ったら千菜はどうする」

「えっ」


 一瞬、言葉に詰まってしまった。でも、すぐに首を横に振って答える。


「やだよ辞めない。仕事楽しいもん」

「そうだよな」


 貴利くんが静かに笑う。その横顔を見つめながら、どうしてそんなことを聞かれたのか私は不思議でたまらない。

 もしかして貴利くんは結婚したら私に仕事を辞めて家庭に入ってほしいとでも思っているのだろうか。

 でも、そんな考えは時代遅れだと思う。今は結婚したって仕事を続けている女性が多いのに。

 それに、貴利くんのお母さんだって医者として貴利くんが子供の頃からずっと第一線で働いているし、私の母だって私が子供の頃からずっと心理学者として仕事を続けている。

 自分で選んだ好きな仕事だ。そう簡単には辞められない。

 でも、辞めないと私は貴利くんと結婚できないのだろうか……。

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