エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 不安になって貴利くんの横顔を見つめていると、真っ直ぐに前を見ていた彼の視線がようやく私に向けられた。


「俺も千菜には今の仕事をずっと続けてほしいと思っている」

「じゃあどうして辞めてなんて言うの?」

「辞めろとは言っていない。辞めてくれと言ったらどうするか聞いただけだ」

「どうしてそんなこと聞くの?」


 質問を返すと、貴利くんの視線が私から逸らされた。


「いや、深い意味はない。ただ、なんとなく聞いただけだ」


 なんとなくでそんなこと聞かないでほしい。一瞬だけど、仕事を辞めないと貴利くんと結婚できないのかと不安になってしまったじゃないか。

 ムッとした表情で見つめていると、貴利くんのジャケットのポケットの中で握られている手の力が少しだけ強まった。


「ほら、ラーメン屋に着くぞ。なに食べるのか決まったのか」

「えっ、もう着いちゃうの」


 すぐそこにはもう看板が見えてきている。

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