エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
別々の道
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当直明けからの日勤、それから残業を終えてようやく仕事が終わったのは午後八時。
職員用入口を出た途端に吹き荒れた、ひんやりとした冷たい風が身体に染みた。ジャケットのファスナーを首元まで閉めると、俺は通勤用の自転車を停めている駐輪場へと急ぐ。
「よっ、郡司」
蛍光灯の明かりの下で、自転車の鍵を開けていると、聞きなれた声に名前を呼ばれた。顔を上げると少し離れた場所で手を振っている人影を見つける。暗くてよく見えないがたぶん三雲だろう。
「これから帰り?」
「ああ」
頷くと、「俺も俺も」と三雲が走りながら近づいてきた。やけにご機嫌だ。
「郡司はこのあと何か予定あるの?」
「いや、特にない。家に帰ってすぐに寝る」
正直なところ今も三雲と話しながら睡魔に襲われている。早く帰って布団に入って眠りたい。
腹は減っているが、どこかに買いに寄る気力もないし、家に帰ってから作るのも面倒だ。風呂は明日の朝にでも入ればいい。とにかく寝たい。
それなのにどうやら三雲はこのまま俺と会話を続ける気でいるらしい。
「俺はこれから彼女と一日遅れのクリスマスデート。ああ、早く会いたい」