エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 抱き締めたあとは必ずキスをする。いつもその流れだからきっと今もそう思ったのだろう。千菜が俺からのキスを待ってそっと目を閉じた。

 本当はその唇にすぐにでもキスを落としたい。でも、俺はグッと自分の唇をかみしめてこらえる。そして、キスの代わりに静かに告げる。



「千菜。結婚はやめよう」



 千菜が、驚いたように目を開いた。

 どうして……。言葉にはしていないが表情が俺にそう訴えている。

 そんな彼女の顔を真っ直ぐに見られなくて、俺は千菜に背を向けた。


 千菜には千菜らしく生きてほしい。


 俺と一緒にアメリカに来たらきっと彼女の人生は崩れてしまう。


 だから俺は、千菜とは別の道を歩くことを選んだ。


 たぶんこれで合っている。


 そう自分に言い聞かせて……。



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