エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
『やだよ辞めない。仕事楽しいもん』
はっきりとそう答えてしまったから、貴利くんはアメリカ行きのことを言い出せなくなったんだ。
「貴利くんは私のことわかってない。私、一緒にアメリカに来てほしいって言われても断ったりしないのに。貴利くんのために仕事を辞めて付いて行く」
本当は辞めたくない。でも、貴利くんと結婚して一緒に生活をするためなら我慢する。仕事も大切だけど、今は貴利くんのことも大切だから。
すると、目の前からくすくすと笑い声が聞こえた。
「三雲先生? どうしましたか」
肩を揺らし軽く笑っている三雲先生に私は首を傾げる。何かおかしなことを言っただろうか。
「ごめんごめん。急に笑ったりして。千菜ちゃんの今の答え、前に群司が俺に話していたのと同じだったからおかしくて。あいつ、千菜ちゃんのことものすごくちゃんとわかっているよ」
すっと笑いを止めて、三雲先生が私を見つめる。
「千菜ちゃんならきっとそう言ってくれると思ったから、郡司はアメリカ行きを千菜ちゃんに話さなかったんだ。千菜ちゃんが図書館の仕事が好きなのを知っているからこそ、自分のために辞めたりしないで続けて欲しかったんじゃないかな」