エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 当時を思い出しているのか、三雲先生が笑いを堪えている。そんな自分を深呼吸で落ち着かせてから、三雲先生は話を続けた。


「千菜ちゃんのおばあさんってくも膜下出血で亡くなったんだよね」

「えっ、……はい」


 突然祖母の話をされた私は、話の流れが分からず少し戸惑いながら頷く。


「千菜ちゃんがおばあさんを亡くして泣いているのを見て群司は決めたらしいよ。千菜ちゃんのために何か自分にできることがないかを探して、千菜ちゃんのおばあさんの命を奪った脳の病気を治せる医者になりたいと思ったんだって」


 三雲先生の話を聞いたときふと、港町総合病院の屋上での貴利くんの言葉を思い出した。


『俺は、千菜のために脳外科医になったのに。あのときの千菜のように女の子を泣かせてしまった。医者なのに、俺があの子の祖母を救えなかったから』


 私のために……。今振り返ると確かにそう言っていた気がする。そして、泣いている女の子がむかしの私に重なって見えたと、貴利くんは苦しそうに話していた。

 あのときはその意味をしっかりと理解できなかったけど、今ようやく気が付いた。

< 205 / 243 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop