エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 港町総合病院の屋上で、助けられなかった患者さんを思って貴利くんは泣いていた。

 私は子供の頃から貴利くんは何もこわいものなんてない強い人だと思っていたから、そんな彼にも脆くて弱いところもあるのだと初めて気付いた。

 だから、私が支えてあげられたらいいなって思ったのに……。


「それなのに貴利くんが勝手に結婚やめて、私から離れていこうとするから」

「千菜」


 次の瞬間、貴利くんの腕が私を引き寄せた。そして強く抱き締められる。


「すまない。千菜の幸せのためにも俺が身を引いて、結婚をやめることが千菜のためだと思っていた。こんな風に泣かせたかったわけじゃないんだ」

「私の幸せ勝手に決めないでよ」


 私は貴利くんの胸に顔を押し付けると、両手を背中にまわしてしがみついた。


「私、待ってるよ。貴利くんが日本に戻ってくるの。ずっと待っているから。離れていても大好きだからね」


 大嫌いだったのに、私はいつからこんなに貴利くんに惹かれてしまったんだろう。

 貴利くんの方が先に私を想っていてくれたみたいだけど、今は私の想いの方がずっと強いと思う。

 だから、これからも私と一緒に生きてほしい。

 そのためなら何年でも私は待っていられるから。

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