エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 思わずそう納得しそうになって頭を大きく振った。

 確かに人の命は大事だけど、私たちにとっても今日は一生に一度の大事な結婚式のはずなのに。


「挙式まであと二十分……」


 間に合うかしらと呟いて、スタッフが腕時計に視線を落とす。

 今から病院に向かったのならもう絶対に挙式には間に合わない。スタッフもそれを理解したのか、腕時計からすっと視線を離すと静かに告げる。


「残念ながら新郎が不在なので今日の式は中止になりますね。私からゲストの皆様に報告して参ります」


 スタッフがプライズルームから立ち去っていく。


「そんな……」


 私は、力なくイスに腰を下ろした。

 三年待って、ようやくこの日を迎えたというのに。大事な結婚式を放り出して仕事に向かうなんて貴利くんはいったい何を考えているんだ。

 目の前のミラーに写るウエディングドレス姿の自分がかわいそうに見えてきた。

 さっきまで何もかもきらきらと輝いて見えたのに、突然、どん底に突き落とされたような気分だ。

 貴利くんなんてもう知らない。

 三年も待ったのに、こんなのって有り得ない。

 やっぱり私は貴利くんが嫌い。

 大嫌い。

 大嫌いなんだからね。

 もう本当に嫌いだ―――――


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