エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
「寝ぼけているのか? 結婚式はこれからだろ」
運転席に座る貴利くんからそんな言葉が聞こえた。
「これから?」
「ああ。これからだ」
そう言われてもう一度よく頭の中を整理すると、確かにそんな気がしてきた。というか、そうだ。
今朝、貴利くんと一緒に早起きして朝食を食べてマンションを出た。そして、貴利くんが運転する車で式場へ向かった。
「ということは、さっきのは夢だったんだ……」
そうわかった瞬間、ほっと息を吐いた。
どうやら私は移動中に眠ってしまったらしい。そういえば昨夜は結婚式が楽しみでなかなか寝付けないまま朝を迎えてしまった。そのせいか車内で突然睡魔に襲われて目を閉じたんだ。
「夢でよかった~」
「変な夢でも見ていたのか?」
シートベルトを外しながら貴利くんが尋ねるので私は頷いた。
「あと少しで式が始まるのに、貴利くんが病院から呼び出されて式場を抜け出しちゃう夢。それで結婚式が中止になった」
「ああ、なるほど。それで、俺が大嫌いだと寝言を言っていたのか」
「えっ、本当⁉ 私、そんなこと言ってた?」
「貴利くんなんて嫌い嫌い大嫌いと何度も言っていた。寝言だとわかっていても傷付いた」
そう言って、貴利くんは車から降りてしまう。