エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 私も慌ててシートベルトを外すと、ドアを開けて車の外に出た。


「貴利くんごめんね。怒ってる? 寝言だから許して」


 無言で式場の方へ向かって歩いていく貴利くんを追いかけると、私はその腕にしがみついた。すると貴利くんが立ち止まる。


「怒ってはいない。ただ、千菜に申し訳ないと思っただけだ」


 貴利くんにしては珍しく沈んだ声でため息をこぼす。


「付き合っているときからデートにはいつも遅刻してばかりだったし、途中で帰らなければならないこともあったからな。結婚も俺の留学で三年待ってもらって、俺はいつも千菜を振り回してばかりだ。だから千菜がそんな夢を見てしまうのも仕方がないと思ったら申し訳なく思った」

「貴利くん……」


 自然と貴利くんの腕を掴む手にぎゅっと力がこもる。


「今回も、日本へ戻ってきたがまた別の病院へ異動だ。結局、千菜には仕事を辞めてもらうことになってしまった」


 今はまだ港町総合病院で働いているけれど、もうすぐこの病院ともお別れになる。

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