エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
――私と貴利くんが結婚をする。
そんな未来はやっぱり想像ができない。
『いつまで泣いていれば気がすむ。人はいつか死ぬと決まっている。それが遅いか早いかどちらかだ』
九年前のあの言葉が脳裏に過る。
大好きな祖母の死を悲しんで何日も何日も泣き続けていた十七歳の私に、当時二十五歳で研修医として病院に勤務していた貴利くんはそう言ったのだ。
人の死をなんとも思わないような冷たい心を持つ彼が医者として働いているなんて。彼の担当している患者さんとそのご家族が気の毒でならない。あんな人に医者は向いていないのではないだろうか。
「やっぱり貴利くんなんて嫌いだ」
九年前のあの日から、私は彼を遠ざけた。
それなのに、結婚なんてとんでもない。
やっぱりなんとしても回避しなくては。そのための打開策を考えつつ残りの朝食を食べていると、自転車に乗って走っていく貴利くんが、リビングの窓を颯爽と横切っていった。