エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
「どうした。俺の顔に何かついているか?」
けれど、相変わらず他人の感情を読み取るのが苦手というか無頓着というか。彼は、目の前の私のことなどまったく気にする様子もなく、近くを通った店員にコーヒーを注文している。
きっと自分が私から嫌われているとは一ミリも思っていないのだろう。
今日だって本当は会いたくなかった。
この六年間、彼との関わりが一切なくなって、私は穏やかに暮らせていたというのに。こうして顔を突き合わせると嫌でもあの日のことを思い出してしまう。
私はこの男が嫌い。大嫌い。
それなのに、これからの人生を共に歩んでいかなくてはならないかもしれないなんてとんだ地獄だ。
なんとしてでも回避するべく先手を打つことにした。
「言っておくけど」
私は静かに口を開くと、目の前の彼を見据える。
「私はあなたが好きじゃない。これからもずっとそれは変わらないから」
今でも忘れない。
九年前、この男から言われたひどい言葉。
傷付いた心をさらに傷付けられた私がどれほど悲しい思いをしたのか。きっと、ロボットのように感情のないこの冷徹人間にはわからないだろう。