エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~

『千菜ちゃんのために、父さんと大喧嘩してまで脳外科を選んだくらいだ。千菜ちゃんのことが好きで好きでたまらないんだろ』


 ……そういうことか。

 どうやら父親は勘違いをしているようだった。

 そのきっかけはおそらく九年前。俺が、医者として専門にする診療科を決めるときに父親と激しく対立したときのことだと思う。

 その頃の俺は初期臨床研修の二年目で、そろそろ自分の専門とする診療科を決めなければならなかった。

 俺の父親は心臓血管外科医として有名な存在で、難しい症例のオペを数多く成功させてきた名医だ。

 祖父が開業し、現在は父親が院長を務める【郡司総合病院】も祖父の代から心臓血管外科が有名で、全国各地から患者が訪れるほど。

 だからこそ郡司家の長男であり跡取りである俺も心臓血管外科医になることを周囲から期待されていたし、自分もそうあるべきだと思って医者になった。

 初期研修中にいろんな科を回ったが、やはり心臓血管外科以外の科を選ぶことは選択肢にまったく入っていなかった。

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