エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
「ねぇねぇ。さっきの男の子どうして泣いていたの?」
すると、貴利くんが教えてくれる。
「あの子は俺の受け持ちの患者の息子だ。明日の父親の手術に俺が執刀する」
そっか。お父さんの手術を控えているから、不安で泣いていたのかな。
「お父さんは大丈夫なの?」
泣いている男の子の姿を思い出した私は、もしかしたらあの子のお父さんの病状はかなり深刻なのかもしれないと心配になった。けれど、貴利くんは「手術をすれば問題ない」ときっぱりと言う。
「あの子の父親は、慢性硬膜化血腫といって、簡単に言うと脳の中で血液が溜まって塊ができる病気だ。軽い頭部外傷などがきっかけとなってじわじわと出血していくんだが、脳内の圧力が上がったときに吐いたり激しい頭痛が起きたりする」
脳の中に血液が溜まってしまうなんて、話だけ聞くと大変な病気そうに聞こえる。でも、貴利くんがさっき言ったように手術をすれば問題はないのだろう。
「あの子の父親の場合は、一ヶ月ほど前に通勤中に自転車で転んで頭を打って外来に来たそうだ。そのとき担当した医師の記録によると、痛み止めの処方だけで様子を見ていたらしい」
「薬だけ? でも、頭の中で出血していたんだよね」