エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 そのときすぐに手術をしなくてよかったのだろうか。疑問に思って尋ねると、腕を組んだ貴利くんが説明してくれる。


「慢性硬膜化血腫の特徴なんだが、受傷してもすぐには症状が出ないんだ。だから、初めは少し頭痛があるくらいで自力で外来受診ができる。だが、CTを撮っても異常が見つからずに、大抵は痛み止めを処方して、あとは様子を見るしかない。その逆ですぐに症状が出るのは急性硬膜化血腫という」

「へ、へぇ……」


 相変わらず貴利くんの説明は細かく丁寧だ。

 そういえばむかし、貴利くんに勉強を教えてもらうことがあったけど、やたらと説明が長かったと思い出した。特に私が苦手だった数学と化学の公式を三時間くらいかけてみっちりと叩き込まれて、終わる頃にはかなりげっそりとした記憶がある。


「あの子の父親も、初めの受診で確認ができなかっただけで脳内ではじわじわと出血をしていた。今朝早く激しい頭痛と嘔吐があり救急車で運ばれてきた。結果、慢性硬膜化血腫だとわかり明日の朝一で手術をする」

「そうなんだ」

「頭に穴を開けてストローのような管を通し、引圧をかけて血液を抜くんだが、局所麻酔のわりと簡単な手術だ」

「えっ……」


 頭に穴ですと!?

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