エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 貴利くんは淡々と話しているけれど、医学にまったく詳しくない素人の私からしたら、その場面を想像するだけでブルルッと震えてしまう。
 
 ……もうこの話やめてくださいお願いします。


「術後も一週間ほどで退院できるし後遺症も残らない。だから、心配いらない」

「そっか。それならよかった」


 そこでようやく貴利くんの長い説明は完結した。

 あの男の子が大泣きしているから心配したけど、あの子のお父さんは貴利くんが手術をすれば無事なようで安心する。

 ホッとしたので「それじゃ、さよなら」と帰ろうとすると、「待て」とまたも貴利くんに手首を掴まれて引き戻されてしまった。


「俺の送ったメールは読んだか」


 ……やっぱり話題はこうなってしまう。


「はい、読みました」

「それならなぜ返事をくれないんだ」

「それは……」


 あなたと会いたくないからです。と、はっきりとは言えず、もごもごと口を動かす。


「千菜。俺とデートしよう。話したいこともあるし、渡したいものがある」

「渡したいもの?」


 何だろうと気になったものの、すぐに嫌な予感がした。

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