エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 当時を思い出すと、今でも胸が痛む。

 朝、私が祖母の異変にもっと気付いてあげられていたら、もしかしたら助かったのかもしれない。元のような身体には戻れなくても、生きていてくれたのかもしれない。

 そんな後悔と突然の悲しみはしばらく続いて、その日からしばらく私は部屋にこもってずっと泣き続けた――


「――千菜」


 祖母のことを思い出していると不意に名前を呼ばれた。ハッと我に返ると、大きな手が私の頭にそっと優しく乗せられる。


「今、何を考えていた」


 貴利くんが私の顔を覗き込む。その視線から逃げるように下を向き、私は静かに首を横に振った。


「別に。何も……」


 祖母のときのことを思い出していた。そう貴利くんに話したところで、この人はきっと何も感じない。


‟まだそんなむかしのことを引きずっているのか。いい加減に忘れろ”


 きっと冷たくそう言い放って呆れるだけ。祖母を思って悲しむ私には寄り添ってくれない。私の知っている貴利くんはそういう人だから……。


「それじゃあ。私は帰るね」


 頭に乗せられたままの貴利くんの手を振り払おうとすると、不意に彼の手が私の後頭部へと回った。そのままぐいっと強く引き寄せられると、貴利くんの胸に顔を押し付けられる。

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