エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
君の笑顔
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港町図書館に来るのは何年振りになるだろう。
高校生の頃はこの場所でよく勉強を……という口実を作って、図書館に本を借りにくる千菜に会いに来ていた。
たくさんの本に囲まれて目をきらきらと輝かせている千菜の横顔を見るのが好きだった。あの頃はまだそれは恋愛感情とはほど遠くて、ただ純粋に千菜の笑顔に惹かれていた。
港町図書館は俺の自宅や当時通っていた高校からは少し距離がある。そんな俺がここで勉強しているのを、当時小学生だった千菜はいつも不思議そうに見ていた。
千菜の自宅は港町図書館からわりと近くにあり、学校帰りに彼女はよく本を借りに来ていた。司書とも顔見知りのようで、仲良く本の話をしていたし、あの頃から司書になりたいと夢見ていた千菜はどうしたら司書になれるのかを真剣な眼差しで尋ねていた。
ある日、小学校高学年にしては背が低かった千菜が、棚の高いところに並んでいる本を取ろうと必死に手を伸ばしている姿が目に入った。
つま先で立っているせいかふらついて転びそうになっているのが心配で、俺は慌てて駆け寄ると、後ろから手を伸ばして千菜が取ろうとしている本を取ってあげた。
『ありがとう、貴利くん』
本を受け取りながら、千菜は笑顔で俺にお礼を言った。