エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 自宅に会いに行けば、今日は仕事だと千菜の母親に言われたので職場に来てみた。けれど、千菜は迷惑そうな顔を俺に向ける。

 彼女は子供の頃から感情が表にでやすい。

 一週間前も、救急車で急患が運ばれてきた場面を見たときの千菜の表情は固まっていた。次第に悲しみを帯びていくその瞳に、彼女がいったい何を考えているのかなんてすぐに理解ができた。

 祖母が亡くなった日のことを思い出していたのだろう。気が付くと俺は千菜を自分の方へと引き寄せていた。そのあとにどんな言葉を掛けたらいいのかはわからなかったが、今にも泣き出しそうな千菜をただ抱き締めたくなった。


「デートがしたいんだ。千菜の予定を教えてほしい」


 少し前から何度も同じメールを送っているはずなのに、なぜか千菜は返信をくれない。

 これでは予定が立てられない。病院から呼び出されたらすぐに潰れてしまうような俺の貴重な休日と、千菜の休日がどこか重なる日はないのだろうか。

 婚約指輪はすでに購入済みだ。あとはプロポーズとともに千菜に渡すだけだというのに。


「今は仕事中だからその話はしない」


 千菜がこの場から歩き去ってしまうので、そのあとを慌てて追いかける。

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