エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
「春子さんどうしたの⁉」
千菜が慌てて駆け寄っていく。
そこには年配の女性が尻もちをついて座り込んでいた。あたりには数冊の本が散らばっている。
女性は立ち上がろうとしているようだが、身体に力が入らないのか再び座り込んでしまった。
「春子さん大丈夫?」
千菜が、女性の背中に手を添えて声を掛けている。でも、春子さんと呼ばれた女性の方は千菜に視線を向けるものの、その様子はどこかぼんやりとしていた。何かを喋ろうとはしているものの呂律が回っていない。
「小谷さん。春子さんに何があったんですか」
カウンターにいる女性に千菜が声を掛けると、動揺や焦りからか小谷さんと呼ばれた彼女は早口で状況の説明を始めた。
「あのね、えっと……ええっと、中澤さんが借りた本をいつものように風呂敷に包もうとしたの。そうしたら、両手で持ち上げた本を突然落としちゃって。そのあと急に倒れちゃって……」
それを聞いた俺は、中澤さんという年配の女性へ再び視線を向けた。
意識はある。大丈夫そうだ。
でも、気になるな――