エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 彼の場合は実家が総合病院を経営しているから、自分もいつかは医者になると当たり前のように決めていたのかもしれない。

 貴利くんの家族や親戚には医者が多いし、おじいさんとお父さんは心臓治療においてかなりの有名人だ。テレビや雑誌で特集を組まれているのをたびたび目にするし、全国から患者が集まってくるほどの名医。

 そう考えると、貴利くんはどうして専門を心臓にしなかったのだろうかとふと疑問が浮かんだ。

 いつかは郡司総合病院を継ぐのなら、おじいさんとお父さんと同じように心臓治療のプロフェッショナルになる道を進みそうなのに。貴利くんの専門は脳だ。

 そんなことをぼんやりと思っていると、カウンターで貸出業務を行っていた同僚がひょいっと顔を覗かせた。


「あっ、沢木さん発見。ちょっと書庫の本頼まれちゃったんだけど、代わりに行ってもらってもいい? 今、カウンターに私しかいかいないから外せなくて」

「わかりました。行ってきます」

「お願いね~」


 同僚から書庫本の依頼票を受け取ると、私はさっそく地下にある閉架書庫へと向かった。


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