エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 説明のすべてを理解できたわけじゃないけれど、とりあえず春子さんの場合は血管が脳に詰まってからわりと時間が経たないうちに病院で検査ができたため、症状が出てから早い段階でしか使用できない薬剤を点滴するという治療が行えたらしい。

 けれど、それだけでは改善があまり見られなくて、最終的には手術によって脳の詰まりを取ることになったそうだ。

 その手術というのが、カテーテルと呼ばれる細長い管を足の付け根にある血管から通していき、頭まで進めていくものらしい。頭を切らないで治療ができるから患者への身体の負担が少なくすむそうだ。


「その手術は貴利くんがしたの?」

『いや、俺の上司だ。俺も助手としてその場にはいたが……』


 病状を淡々と説明していたときとは違い、その声は少し悔しそうに聞こえた。


『カテーテルを使った血栓回収療法は血管を傷つけるリスクを伴う。高度な技術が必要になるから訓練を積んだ医師にしかできない。だから、中澤さんを救ったのは俺の上司で俺じゃない』

「そんなことないよ」


 思わず叫んでしまった。

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