エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 その思いを“ありがとう”の言葉に詰めて伝えたものの、貴利くんからの返事はない。けれど、しばらくしていつもの落ち着いた低い声が聞こえた。


「俺は、千菜の大事な人を救えたか?」

「えっ……う、うん」


 唐突な問いに一瞬、何を尋ねられたのか理解ができなかった。でも、すぐに気がついて返事をした。

 私にとって春子さんは大事な人だ。これからもまだまだ元気でいてもらって、図書館に本を借りに来てほしいと思っている。


「そうか。それならよかった」


 すると、私の答えを聞いた貴利くんが、電話の向こうでホッとしたように笑った気がした。

 表情は見えないけれど、なんとなくその声の様子から柔らかく頬笑んでいるように感じる。


『もっと精進する』

「うん。頑張ってください」


 そこで通話は終わった。貴利くんは休憩時間に電話をくれたらしく、これからもまだ仕事が続くらしい。

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