エリート脳外科医の溢れる愛妻渇望~独占欲全開で娶られました~
 誰にも内緒だけど、私は今日のデートが少しだけ楽しみでもあった。

 貴利くんのことが嫌いなはずなのに、どうしてそう思ってしまうのか。その理由は自分でもわからないけれど……。

 キッチンから漂ってくるお菓子の甘い香りに包まれながら、ぼんやりとそんなことを考えているうちに、いつの間にか私は眠ってしまったらしい。



 ハッと目が覚めると、何やら楽しげな会話が聞こえてきた。

 そちらに視線を向けると、ダイニングテーブルで母が誰かと談笑している。寝起きなのと、母の話し相手が私に背を向けているため、それが誰なのかすぐには気付けなかった。


「――おばさんのケーキはやっぱり美味しいですね」

「そうかしら。そう言ってもらえると嬉しいわ。今日はチョコブラウニーにしたのよ」

「仕事で昨日からろくに寝ていないので。その疲れも甘いもので飛んでいきそうです」


 ……貴利くんだ。

 なぜか母と楽しそうにお茶とスイーツを楽しんでいる。


「あら、千菜ちゃん。起きたのね」


 母が私に気付いて声を掛けると、貴利くんも振り返る。


「千菜。やっと起きたのか。待ちくたびれたぞ」


 いや、それはこっちのセリフなんだけど。

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