別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「凛子さんと結婚を前提としたお付き合いを許していただきたいのです。湊斗くんは凛子さんと僕の……」

「ママ?」

渚さんが湊斗の話をしようとしたそのとき。隣の部屋で寝ていた湊斗の声がして、襖をあけてこちらへと歩いて来た。そして目を擦りながら私の膝にひょこっと腰を下ろすと、隣に座る渚さんをじーっと見つめる。

思わぬ形での対面を果たし、さすがの渚さんも動揺を見せる。

「湊斗くん……初めまして」

渚さんの声が震えている。だけど向けられたまなざしは優しくて、心なしか潤んでいるように見えた。

「このおにいちゃんだぁれ? ママのおともだち?」

クルッと私の方を振り返り、愛らしい瞳が私を捉える。

「えっと、その……」

どう答えるのが正解なんだろうか。

「この人は湊斗のパパだよ」

戸惑う私の耳に柔らかい声色が届いた。

「お、とうさま……? どうして……」

事実を伝えたのは、私たちのやりとりを黙ってみていた父だった。

「え? ぼくのパパなの?」

「そうだ。湊斗のパパだ。湊斗とママを迎えに来たんだよ」

父は優しく微笑み、きょとんとした表情を浮かべる湊斗を見つめる。父は渚さんが湊斗のパパであることに気づいていたんだ。
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