別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「……初めまして。湊斗くん。今日は会いに来てくれてありがとう」

お父さんがしゃがみ込み、優しい笑みを浮かべながら湊斗の頭を優しく撫でた。

「どうして泣いてるの? 悲しいの?」

「いいや。湊斗くんに会えて嬉しいんだ。パパにそっくりだな」

「じぃじもパパにそっくりね」

「ん? そうかな?」

「うん。泣き虫なところそっくりよ。僕がギュッてしてあげるね」

そう言うと渚さんのお父さんの背中に手を回し、抱きしめる素振りを見せる。そんな光景を見て目頭が熱くなるのを感じ、渚さんと顔を見合わせながら笑い合った。

しばらくすると、お父さんが私とふたりきりで話したいと言い出し、渚さんは湊斗を連れて書斎から繋がるテラスの方へと行って鬼ごっこを始めた。

「今日は会いに来てくれて本当に感謝している。あのときは酷いことを言ってすまなかった。そしてこの三年、すべてをひとりで背負わせてしまって本当に申し訳ない」

「お父様。顔を上げてください」

深々と頭を下げた行動に驚き、スッと渚さんのお父さんの肩へと手を伸ばした。
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