別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
しばしの沈黙が流れる。テラス席に座りながら、お父さんのまなざしが庭で遊ぶ渚さんと湊斗へと向けられた。

「妻が亡くなってから子供たちに寂しい想いをさせまいと必死だった。会社を発展させ盤石な道を作りあげることが渚の幸せだと思っていた。だが、それは間違っていたんだな」

渚さんのお父さんも我が子を守ろうと必死だったのだ。湊斗を産んだ今だからこそ、お父さんの気持ちも理解できる。

「渚が望む道を応援し、見守ることが渚の幸せなのだと気づかされた。あんな風に嬉しそうに笑う渚を見たのは久しぶりだ」

お父さんがふわりと笑う。その表情はとても穏やかだ。

「凛子さん、渚には君が必要だ。どうか息子のことを支えてやってほしい」

「ありがとう……ございます。こちらこそどうぞよろしくお願いします」

泣かないと決めていたのに、視界が滲む。心がスッと軽くなったのを感じながら、頭上に広がる真っ青な空を見上げた。

今日がまた新たな私たち家族のスタートだ。
< 109 / 111 >

この作品をシェア

pagetop