別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
人脈を広げられそうにはないが、岬オーナーのいうように料理やスイーツに関しては盛り付けやデザイン、色どりや配置など勉強になるかもしれないと、少しだけ気分が上がり始めた私はきっと単純人間だ。

「これも可愛い」

そう思うそばからスイーツコーナーに気になる菓子を見つけ、手を伸ばそうとしたそのとき。

「また会いましたね」

そんな私の前にひとつの声が落ちて意識がそちらへと動いた。

「き、如月様?」

「驚かせてしまったようで、すみません」

私の表情を見てそう悟ったらしい彼は、申し訳なそうに苦笑いを見せる。桜のケーキをオーダーしてくれたあの紳士との再会は思わぬ形でやってきた。

「如月様とまさかここで会うとは夢にも思っていなかったので驚いてしまって」

「実は星野グループの顧問弁護士を務めさせていただいているんです。それで今日、ここに招待されたんですよ。佐倉さんはなぜここに?」

「実は創立記念のケーキをオーダー頂いて作らせてもらって、それで招待いただきました」

「そうだったんですね。佐倉さんの作るケーキは素晴らしいのでお声がかかるのも納得です」

ふわりと笑いながら、シャンパンを持つその姿は本当に絵になるように美しい。
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