別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「お待たせしてすみません。弁護士の如月と申します」

相談室の椅子に美紅と並んで座り渚さんの登場をそわそわした気持ちで待っていると、しばらくして彼は颯爽と現れた。

一瞬私の顔を見て驚いたような顔を見せたが、すぐにふわりと笑い目の前の席に腰を下ろすと美紅に向かって名刺を差し出す。

渚さんには私がここに来ることも、友人の美紅がここに相談の予約をいれたことも伝えてはなかったので、渚さんがこんな反応を見せるのは当然だ。

隣の美紅に目をやればその表情はどこかうっとりしているように見えた。確かに渚さんの美しい顔をみればそうなるのも分かる。

「どうぞ今日はよろしくお願いいたします。主人と伺う予定だったんですが、急に仕事が入ってしまい彼女に付き合ってもらったんです。おふたりは知り合いなんですよね? 凛子にここの事務所を教えてもらったんです」

「そうだったんですね」

「はい。凛子から如月さんのお人柄を聞いて……」

「ち、ちょっと! そんな話はいいから相談を聞いてもらおうよ」

突然、美紅がそんなことを言い出したことに慌てて止めに入り話題を変えようとする。

まったくなにを言い出すかと思えばハラハラさせないでと言わんばかりに美紅をキィーっと睨めば、悪戯な笑みが返ってきた。

そして、なにかを企んでいそうなその顔に胸が落ち着かないまま美紅の法律相談が始まった。
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