別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
***

「家の件、いい方向に向かいそうでよかったね」

「うん。今日は付き合ってくれてありがとう。如月さん話しやすくて説明も丁寧でいい弁護士さんだった」

「そうだったね」

相談帰りに行きつけのカフェでお茶をすることにした私たちの表情は明るい。

弁護士のイメージと言えば固くて冷たいイメージで法律相談に行くことは敷居が高いと思っていたが、渚さんのおかげでそのイメージは一新されとても満足のいくものとなった。

「てか凛子、如月さんと付き合えばいいのに」

「いきなりなに言ってんのよ!」

美紅の突拍子のない発言に驚き、アイスティーを飲んでいた私は噎せ返った。

「プライベートで再会するなんて運命的じゃない? しかも連絡先まで交換するなんて、如月さんの方が凛子に気があるからじゃないの?」

「え? そんなことは……」

頭に渚さんの思わせぶりな発言が浮かぶ。

「やっぱり。思い当たる節があるんだ?」

私の表情からそう読み取ったらしい美紅がにんまりと笑う。

「ないない! てか、いつの間にか話の趣旨が変わってるんだけど」

「私の方は、如月さんのおかげでうまくいきそうだから大丈夫。凛子の彼氏問題の方が深刻じゃない? 最後に彼氏がいたのいつよ?」

「えっと……今のお店に移る前くらいかな?」

そういえばもう何年も男性とお付き合いしたことがないことに気が付いた。仕事に没頭するあまり恋愛はご無沙汰で完全なる干物女状態だ。

誰かに恋をするという感情もトキメキも、今じゃどんなものだったか思い出せない。
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