別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「凛子、お誕生日おめでとう」

「ありがとう」

表参道にあるおしゃれなイタリアンレストランの個室に入ると、すでに美紅が到着していて私を見てニコリと微笑んだ。毎年私の誕生日をこうやって祝ってくれる美紅の存在は本当にありがたい。

「如月さん、どんなお祝いをしてくれるんだろうね? 楽しみだね」

「そうだね。忙しいのに時間を取ってくれるだけでありがたいよ」

「凛子ってばもっと嬉しそうにすればいいのに。クールなんだから」

イタリアンのコースを食べながら美紅が悪戯っぽく笑う。今日は渚さんの仕事終わりに落ち会い、一緒に食事に行くことになっている。

美紅が気を利かせ、夜は渚さんと過ごせるようにとランチに誘ってくれて誕生日を祝ってくれたのだ。

「今日はお泊りなんでしょ?」

「え? レストランでディナーをしてそのままホテルに泊まることになってはいるけど」

「熱い夜になりそう」

「え?」

にんまりと美紅が笑う。

「ちょっとなにを想像してるの。からかわないで」

「誕生日に初めて結ばれるなんてなんかロマンチック。如月さんよく今まで我慢したよね。でも今日はさすがにね」

美紅の言葉に頬が上気していく。キスなどのスキンシップをしてくることがあっても渚さんはそれ以上を求めてくることはなかった。たぶん私の気持ちを汲んで私がそういう気持ちになるまで待ってくれていたんだと思っている。

自意識過剰かもしれないが、さすがに今日はそれで終わらない気がする。

「如月さんにすべてを委ねて楽しんで来てね。ちゃんと今度話聞かせてよ?」

戸惑う私の前で美紅のどこか楽しそうな声が響いた。
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