別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない
「凛子、もっとリラックスしてくれ。個室だしなにも気を張る必要はないだろう?」

「すみません。高級感に溢れていてなんだか恐縮してしまって」

「今日は凛子の誕生日なのだから特別なディナーを共にしたいと思ってね。この場所にしてみたんだ」

「ありがとうございます。それにしてもここの予約を取れたのがすごいですよね」

「父がこの店を贔屓にしていてね。この店の建設に携わったから色々と融通を利かせてくれて予約が取れたんだ。完全なコネってやつだな」

「お父様は建設関係のお仕事をなさってるんですね」

そういえば今まで渚さんの家族の話を聞いたことがない。お母様が亡くなっているということ以外なにも知らないのだ。

「父は会社を経営している。『如月コーポレーション』という会社だ」

「え? 如月コーポレーションって……」

その名を聞いて一瞬目を丸くした。〝如月コーポレーション〟その名は聞いたことがあった。確かこの辺りでリゾート開発や再開発事業、大規模な宅地造成、オフィスビルの建設などの事業を展開している旧財閥系グループだ。

つまり渚さんは正真正銘の御曹司ということになる。

「手が止まっているようだが、どうかしたのか?」

「いえ、特に……」

驚きすぎて料理を食べるのも忘れてしまうくらいに動揺が走っていた。そんな人が私と釣り合うわけがない。それになぜ渚さんはお父様の会社に勤めないで弁護士になったんだろう。そんな疑問が頭をループする。
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