別れたはずの御曹司は、ママとベビーを一途に愛して離さない

基本、オーナーは自由に仕事をさせてくれる。【お客様の理想と夢を形にするケーキ作り、そしてささやかな幸せをみなさまに】そんな思いのもと、五年前に岬(みさき)オーナーがこの地にケーキ屋をオープンさせた。

岬オーナーは二十五歳のとき、パティシエの世界大会で優勝し、その名を一躍、轟かせた。ケーキの味やデザインはもちろんのこと、長身でスタイルがよく、甘いマスクの持ち主とくれば、メディアはそれをほおっておくわけがなくて、テレビや雑誌で特集が組まれるほどの人気パティシエとなった。

そんな岬オーナーは三十歳のときに自分のお店を立ち上げて、その店のスタッフとして働かないかと岬オーナーに声を掛けてもらったのが、私が二十二歳のときだ。

憧れの先輩、岬オーナーに声を掛けてもらい、私はひとつ返事でそれを承諾したが、そこからの道はとても厳しかった。

なぜなら完全オーダーケーキの店なので、お客様のイメージや要望に百パーセント応え、それを形にする難しさとプレッシャーは計り知れないものがあったから。

それにここは誰にも負けない技術がなければ、生き残れないし指名ももらえないシビアな世界でもある。